風船
「風船」
しぼんだり、ふくらんだり
繰り返しては、のびていく。
初めは、恐れることなく
ありったけの「期待」と夢を
つめ込んで、吹き込んでいく。
しぼんだり、ふくらんだりを
繰り返しながら、ふくらみすぎた「期待」は
いつの日か
前触れもなく抜けていく。
夢のすき間を、抜けていく。
破れてしまった風船は
二度と、のびることはないという。
そうして、大人は諦めていく。
クレヨンで描いたような、ふるさとで
手のひらで跳ねる、小さな風船を
懐かしみながら、抱きしめていく。
時の向こうに、手を振ると
安心と虚しさが、交ざりあい
流れた景色を、撫でていく。
それでも僕らは、あの頃に
期待と夢を、ふくらませ
風を探しては、船を飛ばしていたんだ。